フユメキ。 バレンタイン小話 小織とみゆきの場合
二月十三日の深夜。
部屋に、大好きなチョコレートの香りが充満している。
「これが生徒会への差し入れでー、こっちがみいちゃん専用!」
そんな感じで声を出しながらのクッキー作りは、深夜でも苦ではなかった。
大好きなみいちゃんが、私の大好きなお菓子作りで、きっと喜んでくれる。そう思い、私は笑顔でチョコレートを湯煎にかけていた。
◇◆◇◆◇◆
そして、バレンタインデー当日。
「じゃーん!」
生徒会室で、私はクッキーの包みを開いた。
「小織特製チョコレートクッキーです! 皆さんどんどん食べてください!」
「あら、ありがとー、小織ちゃん」
「えへへっ、お口に合うといいんですが」
真白ちゃん先輩はクッキーの山から一つを取り、口に運んだ。そしてすぐに「美味しいよ」と言ってもらえて、ひとまず安心した。
すると。
「私はトリュフを作ってみました」
みいちゃんが、そう言って机にチョコレートを広げた。
「えっ、みいちゃんが作ったの!? わー、頂戴!」
「急がなくても沢山あるわよ」
みいちゃんの作ったトリュフチョコレートはちょっぴりビターなほろ苦さが美味しかった。
「あっ、そうだ。それからね、みいちゃんにはこれも!」
私は鞄から別の包みを取り出して、「はいっ」とみいちゃんに差し出した。
「これはみいちゃん専用の特別なクッキーだよっ」
「そんな、わざわざ? ありがとう、小織」
「えへへ〜、紅茶味を作ってみたんだよっ」
でれでれになっている私を。
リコさんが(やれやれ)、真白ちゃん先輩が(可愛い子だわ)、千鶴さんが(お熱いねぇ)と、三年メンバーは微笑ましいものを見る目で見ていた。
小織とみゆきの場合 - fin.