heavenly blue 終章 志麻と凪


 朝。
「わ、遅刻する」
 アラームをセットするのをうっかり忘れていた私は、慌てて登校の用意をしていた。
「行ってきます」
 そう言って家を出たのは何とか普段と同じ時刻だったので一安心して歩き出した。
 桜並木の道を進んでいく。
「凪、見て、桜。綺麗だね」
 私は隣を浮遊する凪に話し掛けた。
「……そう」
 相変わらずの素っ気ない返事が返ってくる。
「志麻、髪に花弁付いてる」
 不意に凪の手が伸びてきて、私の髪を撫でた。ひらりと一枚、花弁が落ちる。
「ありがとう、凪」
「別に」
 天使が一緒の、ちょっと特別な通学路。けれどそれがこれからどんどん当たり前の日常になっていくのだ。
 爽やかな春風を受け、花を付けた桜の枝の隙間から覗く空はどこまでも蒼かった。

 それは、私が幼い頃に憧れたファンタジーの世界のような毎日が始まった、夢のような春の日。



クリスクロス
chapter.01 heavenly blue - fin.